珍島挽歌珍島挽歌(無形文化財 第19号 1987年8月25日指定)山河の草木は若返り、わが人生は暮れてゆく 青春を謳歌する若者たちよ、この白髪を笑うことなかれ 風になり雲になり雨と雪になって、我は行かん オーホイ、オーイ オイガリノムチャ、ノワノ・・・・ あの世への険しい道をいかに越えよう この世に友達は多かれど、誰が代わりに行ってくれようか 家族や親戚は多かれど、誰がお供をしてくれようか <喪輿歌の一部より> 人は誰も死ぬ!私達が生きている現在の生活は、ちょっと立ち寄るだけの短い旅の一瞬ではないか。そんな旅に終わりを告げ、この世で成しきれなかった思いを残していった魂を慰める歌が珍島挽歌である。 珍島では葬礼の一過程で歌う挽歌までも、芸術の形態で残っている。チャンゴ・太鼓・ケンガリ・ピリなど、さまざまな楽器を使う珍島挽歌は人々の心を溶かし、現世に生きる人があの世に旅立つ死者のために送る、この世での最後の歌である。 生前、故人が踏んだ田の畦道を過ぎ小高い丘に登ると、青い海が見渡せる島。この珍島を後にして行けない死者の魂は、時には空を飛ぶ鳥になり、時には温かい太陽の光で大地を照らし、時には雨になり、時には農夫の汗を拭う涼しい風になり、人々の心に歩み寄る。柩(ひつぎ)を担ぐ島人は、珍島挽歌を歌いつつ、短い人間の「生」を嘆きつつ「死」とはけっして遠くにあるのではなく身近にあることを認識していく・・ [写真]2005年7月22日神秘の海割れ祭りにて 集まった観光客は挽歌の行列について歩く。この日は午後6時半から20分間が挽歌の公演であった。ポンお婆さんの伝説をもとにお婆さんの柩をかついで行く。予定より挽歌の行列は早く終わり、写真に収めようとしたカメラマンは残念がっていた。 |